2018年3月3日土曜日

今日の剪定鋏 9

  宗寛  特製A型20cm金止














  たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は「酩探偵かねぽん」。

   さあ、皆さんお待ちかねの、剪定鋏の世界の謎を解明するコーナー(笑)がまたやって来た。

  今回取り上げる謎は、「宗寛」の剪定鋏だ。

  「宗寛」は、山形県山形市にある「阿武隈川宗寛刃物工場」の登録商標である。
   「阿武隈川」というと、他にもうひとつ、「有限会社 阿武隈川製作所」が東京都台東区にあった。「阿武隈川」の酩が入った剪定鋏を作っていた会社である。
   東京と山形、何故ふたつの阿武隈川があるのか。詳しい事情は分からないが、どうやらお家騒動的な出来事が有ったらしい。
   東京阿武隈川から創業者の四代目、阿武隈川宗寛氏が逐われ、腕の立つ職人が大勢いた山形で再び興したのが「阿武隈川宗寛刃物工場」だったようだ。














  その後、東京の「有限会社 阿武隈川製作所」は廃業し、今「阿武隈川」の商標は、埼玉県三郷市の「株式会社 刀舟技研」が所有している。まだ「阿武隈川」の刻印を打った剪定鋏は市場に存在しているが、おそらく東京や埼玉で製造した物ではないだろう。















  で、本題の「宗寛」のA型剪定鋏だが、実は昨日紹介した「光月」や「丸清」のA型剪定鋏と同じなのである。
(画像中央が『宗寛』、右が『光月』、左が『丸清』)
  という事はつまり、














  「宗寛」のA型は「光月」のそれと共に、山形の「工藤製鋏所」で作られている、という事になる。
  何故その事に気付いたかというと、「やまがた企業等情報データベース」に「阿武隈川宗寛刃物工場」の取引先として、販売先(受注先)の欄に「株式会社 五香刃物」が、そして仕入先の欄には五香刃物と「有限会社 工藤製鋏所」が記されていたからである。
 








   さて、ここからは推測だか、「光月」のA型は阿武隈川宗寛刃物工場が工藤製鋏所から鋏を仕入れ、それにミラー仕上げやクッションばねを付加して「光月」の刻印を打ち、五香刃物に卸した物ではないだろうか。今の工藤製鋏所の製品でその手の加工をした物が見当たらないのでそんな推理が成り立つのである。

   今日もまた、謎がひとつ解かれ、真実が明るみになった。
   しかし、まだ剪定鋏の世界は多くの謎に満ち、深い闇に閉ざされている。いつか全てが白日の下に晒される時は訪れるのだろうか。

  「酩探偵かねぽん」、次回もお楽しみに!
 

  (今日が最終回という可能性もあります)

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