世界の傑作機
スペシャルエディションVol.7
陸軍二式複座戦闘機
屠龍
「世界の傑作機」シリーズは、文林堂がほぼ隔月で刊行している飛行機に関する本である。毎回特定の機種だけを詳しく取り上げている。自分は毎号買っているわけではないが、大戦中の飛行機や、それ以外の好きな機種が特集されている号は買う事にしている。
今回はスペシャルエディションという事で、川崎航空機で開発・製造され、日本帝国陸軍で運用された「二式複座戦闘機 屠龍」が取り上げられている。
自分にとって「屠龍」という飛行機は、大した性能でも無いのに何故か使われ続けていた駄作機というイメージしか無かった。実際戦後にこの機体を調査したアメリカ軍も、他に日本軍には有用な機体が無かったから仕方なく使っていたのだろうとか報告していたらしいし、日本の操縦士も、出来れば別の機体にして欲しいとか思っていたようである。だが、この本に載っている当時の写真を見ると、この機体が実に様々な戦線で様々な用途に使われていたのが分かる。昭和16年の5月に初飛行し、10月に運用が開始され、翌17年の2月にはもう制式採用されているというのも驚きだが、それが終戦間際の20年の7月まで試作機も含めると1691機も製造され、その間に航空工厰や運用基地において多種多様の改修や改造が行なわれているというのだ。写真を見比べてもそれぞれ細かい点が違っていて、二つとして同じ機体が無いように見える。
「屠龍」という飛行機は、双発機として生まれた為に、敵の単発戦闘機の機動性には歯が立たなかった。それで爆撃機を相手にするようになったのだが、護衛戦闘機に行く手を阻まれ、夜間戦闘機として運用される事になる。その後B29のような高々度を飛ぶ爆撃機が本土上空に現れるようになると、その上昇能力を買われて邀撃機として使われ、やがて幾つかの機体は特攻機として散華していく。
そういった転身が出来たのは、この「屠龍」が始めから広い用途を想定して作られた機体だったからだろう。構造が比較的シンプルで故障が少なく、頑丈で整備がしやすい機体だったからこそ、突出した性能がなくとも常に過酷な戦場の第一線で活躍出来たのだ。
自分はこの本を読んで「屠龍」という飛行機を少し見直してしまった。もう二度と「屠龍」の事を駄作機とは呼べないと思った。
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