2018年6月2日土曜日

今日の本 15

  「スタジオパルプ ①」  久米田康治













   年3回だけ白泉社から発行される「楽園」という雑誌に連載されている久米田康治氏の漫画「スタジオパルプ」の第1巻が発売された。
   この漫画の主人公「役者丸ひろ子」は、スターを夢見る役者志望の女の子。ある日彼女はB級スターばかりが集う不思議な撮影所「スタジオパルプ」に迷い込む。この作品は、様々な知らない役者達との出合いを通して日々成長しながら逞しく生きてゆく一人の女優の物語である。

  かと思いきや、実際はダジャレと屁理屈に時事ネタと下ネタを絡めながら、キャラの立った登場人物達が強引に話をこじつけていく群像劇と言った方が良いだろう。全編今まで通りに久米田節が炸裂するギャグ漫画だから、安心して読んでいられると思う。例えば、「枕営業」と言いながら普通に枕を販売しているだけだったり、口喧嘩と称してキスをして挙げ句の果てに友情が芽生えて同棲してみたり、「全米が泣いた」というコピーの「全米」が実は「全米さん」という一人の人物の事だったりとよくもまあそんなくだらない事ばかり考え付くものだとあきれながらも感心してしまう。

   この作品の登場人物は、役者丸ひろ子を除くとほとんどが過去の久米田氏の漫画の中で役を演じてきたキャラクターばかりである。「改蔵」「糸色望」「サンジェルマン伯爵」等がそれぞれ「高橋」「佐々木」「山田」という役者として登場している。これは手塚治虫氏が確立した「スターシステム」のパロディーでもあり、第1話では、そのスターシステムそのものがテーマとなって話が展開している。

   しかしこの作品、掲載されている雑誌が年3回しか発行されてない為に、連載開始から第1巻発売まで3年以上かかっている。第2巻が発売される頃、自分は何をやっているんだろうとか、そもそもその時まで雑誌がもつのかとか、色々考えさせられてしまう。間が空き過ぎるのには色んな弊害があるはずである。














   例えば、「名取羽美」こと小林が、Act.1では「彼女一人の中に23人のキャラクターが居るんだ…」と言われているのに、Act.7では「27の人格があるのよ」になっているのは、作者が前に描いた話をすっかり忘れている証拠だと思う。

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