講談社現代新書
ダーウィンの呪い
千葉 聡
2023年11月20日第1刷発行
株式会社講談社
▲本の帯に「科学ミステリー」と記されているが、実際は歴史書と言った方が適切かも知れない。ダーウィンの「種の起源」以降に起こった人類の歴史の闇を暴いている。この本を読めば、これまでいかに人類がダーウィンの進化論を誤解し、悪用してきたかが分かる。ダーウィンの進化論は、その後優生思想の普及に利用され、強制不妊手術を正当化し、ホロコーストへと繋がっていく。ナチスによるユダヤ人の大量虐殺は有名だが、犠牲になったのはユダヤ人だけではなかった。社会的弱者の多くが監禁され、去勢や不妊の処置をされたり殺害されたりしていた。日本でも近年まで本人の承諾がないまま障碍者の不妊手術が行われていたが、実はそれらの手本となったのがアメリカの不妊手術法だったというのはあまり知られていないだろう。そしてこのようなおぞましい行為に人々を駆り立てたのは、少なくとも建前上は悪意などではなく、「人類の進化に貢献したい」という善意だったというのも皮肉である。
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