2020年4月11日土曜日

紛争調停人


最近読んだ本

創元SF文庫
火星の遺跡
ジェイムズ・P・ホーガン 著
内田昌之  訳


株式会社東京創元社
2018年12月21日  初版発行


    2010年に亡くなったSF小説界の巨匠、ジェイムズ・P・ホーガン(James  P. Hogan)が2001年に発表した`Martian  Knightlife´の翻訳。物語の舞台は人類が太陽系全域に版図を拡げた後の未来の火星。主人公は通称ナイトことキーラン・セインという謎の多い人物。巻末の解説を担当しているSF評論家の礒部剛喜氏によれば紛争調停人となっているが、実際のところは悪を懲らしめる詐欺師と言った方が正しいかもしれない。物語は二部構成になっていて、第一部では人体の転送技術を開発した科学者の身に起こった奇妙な出来事を、第二部では火星で見つかった遺跡を発掘している考古学者が見舞われたトラブルを、主人公が持ち前の頭脳と口先と変装術を駆使して解決する痛快な話となっている。日本語タイトルは「火星の遺跡」となっているが、火星の古代文明の謎を解明する話ではないので、あの「星を継ぐもの」(著者のデビュー作)のような展開を期待して読むと裏切られる事になる。著者の文体はどうでも良いような細部に拘りすぎる傾向があって読み進めるのが少し疲れる部分もあるが、物語や登場人物にリアリティをもたらす為には不可欠な要素なのだと思う。




   ところで、創元SF文庫って昔は創元推理文庫だったと思うんだけど、いつの間に変わったの?

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