2025年8月29日金曜日

江戸と北京

 


講談社学術文庫

幕末日本探訪記
江戸と北京

ロバート・フォーチュン
三宅 馨 訳

1997年12月10日 第1刷発行
株式会社講談社





▲1960年(万延元年)とその翌年、開国直後の尊王攘夷の嵐が吹き荒れる日本を訪れたスコットランド出身のプラントハンター(植物採集家)、ロバート・フォーチュン(Robert Fortune)の日本滞在記。著者は日本で様々な植物を採集し、1962年に英国に帰国、翌年にはこの本を上梓している。何故彼はそんな一番剣呑な時代に日本にやって来たのだろうか。
  フォーチュンのプラントハンターとしての経歴のスタートは阿片戦争直後の中国。東インド会社の依頼に応えてチャノキをインドに持ち出す事に成功し、その後インドは紅茶の一大産地となっている。そもそも阿片戦争の原因は、茶葉の輸入による英国の貿易赤字だった事は誰でも知っている事だ。
  また彼は日本での目的を達した後、アロー戦争直後の北京までわざわざ足を運んでいる。この手記を読んでいて絶対にこの人物はただのプラントハンターではないと思った。
  日本で採集した植物をどうやって本国に運んでいたのかも気になったのだが、今で言うワーディアンケースに入れて船で本国に運んだらしい。航海中は水を全くやらないと書いている。完全に密閉したガラス張りの小温室の内部でうまく水分が循環するようになっていたのだろう。
  フォーチュンは植物だけでなく、当時の日本や中国の風物や文化、習慣等についても記述している。その視点には自分達と異質な人々を蔑むような部分がない。そんな意味でも彼は只者ではないと思う。






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